創立の経緯と理念

明治32年、30名の会員により発足

 関西丹波市郷友会は、明治32年(1899年)に「大阪氷上郷友会」として発足しました。創立総会は10月21日、大阪市北区の「静観楼」にて行われ、30名の出席のもと、会則の制定や幹事の選出が行われました。

 2年後の明治34年(1901年)に東京の氷上郷友会と合併し、「氷上郷友会大阪支部」となりました。明治35年(1902年)の「氷上郷友会」会報2号には、東京本部と大阪、京都、神戸、氷上各支部から60名以上の「基本金寄贈承諾人」が名を寄せ、合計9,275円となったことが記されています(消費者物価指数をもとにすれば、現在の貨幣価値にすれば約3,700万円)。

 その後大正14年(1925年)に「関西支部」となり、昭和7年(1932年)に独立して「関西氷上郷友会」に、平成17年(2005年)氷上郡6町が合併したことに伴い「関西丹波市郷友会」と改称し、現在に至ります。

※(写真)明治35年(1902年)氷上郷友会京都支部にて開催された「第3高等学校入学生(3名)歓迎会」の様子(日時場所不詳)

会報に記された発足時の思い

 先に紹介した会報2号には、明治35年(1902年)4月に柏原の崇広小学校講堂で開かれた氷上郷友会創立総会の様子が記されています。

 この席で、田健治郎東京本部委員長が設立の経緯の中で、当時の様子を次のように述べています。

福岡、山口、石川などの各県で旧藩主を中心に在京などの学生を支援する機運が高まり、大学卒業生の数が際立って多い。隣の多紀郡も郡内に鳳鳴義塾を作り、東京でも多くの学生の少額育英を進め、成果を上げている。

 その上で、これらに倣って、有為な青少年を育て上げるべく大いに活動を広げようと提唱しています。

 今に続く、活動の理念です。

 この挨拶を読み返すにつれ、当時、上京して勉学に励む同郷の若者が道を踏み外すことないように支える体制を整えることが、すなわち立派な社会人を育み、政財界に他地域に伍する人を送る礎になるという、熱い郷土愛を感じることができます。

※(写真)大正14年(1925年)10月14日開催の「創立25周年記念祝賀会」の様子(大阪市の中之島中央公会堂)

東京における発足までの経緯

 前述した田氏による挨拶では、関東における氷上郷友会発足への経緯が述べられています。

明治28、29年頃から氷上出身の学生たちが春秋2回集まって親睦を深めていたが、社会人も参加して、奨学育英の支援や指導監督なども行う機関を作ろうという機運が高まってきた。

 こうして、明治29年11月2日に東京氷上郷友会の発会式が行われたといいます。関西における郷友会の設立は、これからほどなくしてなされたことになります。

 歴史をたどると、氷上郷友会として合併した翌年の明治35年(1902年)から明治36年(1903年)にかけて、氷上女子郷友会創立の記録があります。京都府立高女や同志社などの女学生中心に設立したが、嵐山への遠足の後、2年で消滅したそうです。

 その頃、氷上郡には高等女学校が無かったので、女性が勉学を務めるには京都の女学校に進学していました。人力車に乗って多紀郡を東行、園部から松並木の残る京街道を南下したと伝わります。

 なお、東京氷上郷友会は現在も関東氷上郷友会として存続、会報「山ざる」の発行など活発な活動を継続されています。

 ちなみに、「郷友会」の読み方ですが、東京では「きょうゆうかい」、関西は「ごうゆうかい」です。なぜ違うのでしょうね。

※(写真)氷上女子郷友会創立記念写真(明治35年ないし36年、京都にて)

120周年を前に再起動

 関西丹波市郷友会は、太平洋戦争による中断期はありましたが、継続して後進育成に取り組んできました。

 後進育成の系譜については「これまでの取り組み」を、会としての年表は「丹波市郷友会略年譜」をご参照ください。

 近年の関西丹波市郷友会は、会員の高齢化もあり会員数も減少傾向と厳しい状況にありました。

 しかしながら、創立120周年を前に平成27年(2015年)から役員を増強、地元丹波市内からの会員の増強を図りました。

 平成28年(2016年)からは新たに会報「たんば」の発行を開始し、再起動ともいうべき活性化を図っています。

※(写真)平成28年(2016年)11月6日、「郷友会は新たに生まれ変わります」を合言葉に初めて丹波市で総会を行った(たんば黎明館)

【参考資料】

  • 「関西氷上郷友会 創立100周年記念号」(余田貞雄編纂)
  • 「錚々たるリーダーの下に 関西丹波市郷友会117年の歩み」(小田晋作、会報「たんば」第1号掲載)
  • 「多士済々、興味深い寄稿 戦前期の会報をひもとく」(小田晋作、会報「たんば」第4号掲載)
  • 会報「たんば」第4号、5号事業報告